アコースティックギタリスト 渡辺良介 Official Website
クラシックギター試奏記1/2。

クラシックギター試奏記1/2。

こんにちは。
最初の書き貯めが尽きた途端に、だいぶ間が開いてしまいました。
またストックができてきたので、しばらくは毎日更新できそうです。

前回の記事で紹介したセルヒオペレス(Sergio Perez)のクラシックギターを購入するまでに、いくつものお店で多くのギターを試奏しました。

楽器のレベルが上がっていくと、とにかく個性が強くなります。
何も感想が生まれないギター、というものが無くなりますね。
自分には合わないけど面白い個性を持った楽器、自分がこういう弾き手だったら買っていたであろう楽器…等、発見が数多くありました。

今回は、購入には至らなかったクラシックギターの中から、特に印象に残ったものについて何本か上げていきます。



デヴィッド・ホワイトマン(David Whiteman)-イギリス

TC楽器にて。

自分の楽器がどういう音…というのとは別に、好みの国の音ってありますよね。
スペイン、ドイツ、オーストラリア、日本、アメリカ…

僕は一般的にイギリスの製作家の楽器が好きです。
どの製作家の楽器にも共通して感じることですが、カラリとした素直な発音のギターが多いですね。

このホワイトマンは、その特徴を一番感じました。
93年製で不具合も幾らかあるように見えましたが、
この人の他の楽器も弾いてみたい!と思わせるキャラクターを持っています。

ポール・フィッシャー(Paul Fischer)-イギリス

ドルフィンギターズにて。

面白い楽器です。

裏板がやたらと震えて、振動が全身に伝わってきます。
ストレートな明るい音が、ポーンと元気よく出ていきます。
そしてギターの独奏曲よりも、テンション系の和音をボサノバのようなタッチで弾くとすごく気持ちいい。楽器が単体でリズムを持っているような躍動感があります。

このギターで伴奏して家族や友達と毎日歌えたら、とてもハッピーな人生が過ごせそうです。

ジャン・マリー・フィヨール(Jean Marie Fouilleul)-フランス

フォルテ楽器にて。

「フランス」「フィヨール」という名前だけでバイアスのかかった見方になっているかもしれませんが、とても上品な楽器でした。

80年代の楽器で熟成されている、というのもあるかもしれませんが、パワーに任せてドーン!!という楽器とは全く別物です。

真価を発揮するのはバッハのようにポリフォニックな曲を弾いたとき
それぞれの声部が対等に歌い、並の楽器では埋もれがちな中声部が自然と耳に入ってきます。
クラシカルな響き?と形容すれば良いのでしょうか。そういった音が好みの人には非常に魅力的に感じられるでしょう。

エドガー・メンヒ(Edgar Monch)-ドイツ、カナダ

クロサワ楽器にて。

音の「指向性」ってありますよね。
マイクロフォンで言う無指向性~超単一指向性といった、集音する音の範囲。

このギターは単一指向性で音が出るギターだと感じました。まっすぐ音が飛んでいきます。
これに対して、無指向性のギターは音が溢れるように広がります。

両者を弾き比べた時に、弾いている側の位置で「鳴ってる!」「ゴージャス!」と感じるのは無指向性の鳴りを持つ楽器かもしれませんが、
それらの楽器に比べると、こちらは立体感を強く感じることができます。

音量や音色は優等生の一言。
やや軽やかながら、端正で品があります。

ホールいっぱいに響かせるというよりは、
マイクを1本立てて配信用の音源を録ったり、
レストランやカフェで3~4mの距離で楽しみたい楽器です。

黒澤澄雄(Sumio Kurosawa)-日本

黒澤澄雄さんの工房にて。
写真は無しです。

「昨年の展示会に出た新作がもっっっのすごく良いんだよ」という先生の話につられ、黒澤さんの工房へ。

もともと僕は、低音よりも中~高音を重視して楽器の好みを判断することが多いです。
しかし、このギターの特筆すべき点は低音の出方。

ただの「強い」「出る」「鳴る」とは全く異なる、「乗る」低音です。
曲を弾いたときに、メロディや和音が低音に「乗って」飛んでいくんです

こんな感覚は初めてでした。

楽器の鳴り方に任せるのではなく、演奏者がコントロールしてオーケストラをイチから組み立てていくような楽器です。
『「音楽的な楽器」とは何か?』という問いに対する一つの答えを提唱するような、強烈な印象を残す楽器でした。



楽器を見る視点が増えると楽しくなる

すごい楽器に出会った!というのはもちろんうれしいことですが、それ以上に、楽器を見る視点が自分の中に増えていく、というのが非常に面白いです。

最初は「弾きやすい!なんとなく好き!」ぐらいしか感想が出てこなくても、
異なる特徴を持った楽器を数多く試奏していくと、
音の指向性、
発音のスピード、
内声の出方、
楽器毎の美味しいポイント…
等々、いろいろな視点から楽器を見ることができるようになります。
好みを絞るだけでなく、 自分のやりたいことのために何を楽器に求めるか、というところにも発展していきます。

では、そうして多角的な楽器の見方をするようになると、買うべき楽器が事前に予測できるということでしょうか?

…そうはいかないんです。
いろいろ理屈をつけて時間をかけて見ているつもりでも、最終的に買う楽器はどれも一目惚れ…
そんなものですよね。

それだけ人の想像を裏切ることのできる魔力を持っているからこそ、このギターという楽器は多くの人を魅了しているんでしょう。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
試奏記は明日に続きます。

2件のコメント

  1. 突然失礼します。
    「TC楽器」で販売しているデヴィッド・ホワイトマンのギターについて、
    その試奏した印象を簡単に述べていらしたので、少々お尋ねしたいのですが。
    外国製ギターに興味があり、価格面で目に留まったこのホワイトマンのギターについて、
    出来ればもう少し詳しい印象をお聞きかせいただけないでしょうか。
    かなり前(2月)に書かれたので印象も薄れているかもしれませんが・・・。
    ネット画像では外観の細かいキズなどは分かりませんし、
    不具合もいくらかあるとおっしゃっていて、
    そのへんも含めお聞かせいただければ幸いです。
    なおギターは趣味で約50年ほどになりますが、奏者、国内外の製作家名、
    またギターについての知識はそれなりに持っていますので、
    その辺は心配いりません。
    よろしくお願いします。

    遠山
    1. 遠山さん、コメントありがとうございます!
      ホワイトマンについては、
      ・コンディション…ネックは目立った反りはありません(やや順反り気味だった?)が、テンションのかかり具合という点で、やや不均一に感じました。
      材のスペックや外国産ということを考えると価格は届きやすいですが、その分でナットとサドルは作り直しても良いと感じました。
      93年製ということもあり、細かいキズは全体的にあったような気はします。

      ・音…高音弦のメロディに存在感があります。単旋律が明るくスパーンと飛んでいくので、ここは魅力ですね。スペイン的な甘さとも異なる特徴的な色があると感じます。
      一方で箱全体の鳴り方は、やや狭めの輪郭です。分離が良いと言えばそう聞こえなくもありませんが、トータルのボリュームでいうと少し乏しい印象を受けました。
      もっとも、TC楽器は試奏環境としてはデッドな響きだと思いますので、全体の鳴り方にはその印象も含まれているかもしれません(向かいのクロサワが非常に反射の強い環境であることもあり)。
      覚えている限りはこんなところでしょうか。よろしくお願いいたします!

      Ryosuke Watanabe

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